【17週第85回~最終話】
季節は冬12月、Aldrovanda vesiculosa(アルドロバンダ ヴェスキュロサ)、和名「ムジナモ」の開花から4か月の時が過ぎました。
「ムジナモ」は放射状に伸びる葉の先で虫を捕獲し、花を咲かせるのは夏の日中の1回だけです。
しかも、1時間だけという短い時間であるのにもかかわらず、万太郎は世界で初めてムジナモが花を咲かせることを発見しました。
万太郎(神木隆之介)が植物を心から愛し、大切に思っていたからこそ、他の人が見つけられないことも目にとまるのでしょう。
そんな万太郎を田邊教授(要潤)は認め、
「見つけた者が報告する。あたりまえだろう。」
と「ムジナモ」の論文を書くことを許してくれました。
また、万太郎はみんなが自分を受け入れ、かけてくれた言葉を思い浮かべます。
「万さんと出会えなければ僕は植物学がこんなに楽しくなかった。大学に来てくれてよかった。」 波多野(前原滉)と藤丸(前原瑞樹)
「お前が植物学に抱く心を傍らにいて知りたい。」大窪(今野浩喜)
万太郎は、田邊教授と大学で自分を受け入れてくれた仲間たちに感謝の気持ちでいっぱいになります。
「みんながいたから、この1枚が書けた。うんと感謝している。」槙野万太郎(神木隆之介)
万太郎は仲間に恩を返したい。その一心で懸命に執筆し、ついに論文が完成しました。
東京大学を出禁に!「万太郎と田邊教授」関係修復は難しい?
できあがった論文を田邊教授(要潤)と大学の仲間に見せると、みんな完成を喜んでくれました。
そして、68の図を1枚にまとめた植物画の精密さに、これは万太郎でなければ書けないと感心しています。
しかし、田邊教授の一言で空気が一変します。
「君は自分の手柄だけをほこっているんだな。」 田邊教授(要潤)
「ムジナモ」を見つけたのは万太郎ですが、「ムジナモ」が「Aldrovanda vesiculosa(アルドロバンダ ヴェスキュロサ)」であると突き止めたのは田邊教授でした。
しかし、論文には共著者として田邊教授の名前は書いてなかったのです。
大窪(今野浩喜)にも、「ムジナモ」が「Aldrovanda vesiculosa」だと分からなかったら、論文は書けなかったはずだと言われますが、万太郎は不思議そうな顔をしています。
論文の共著者となる可能性がある行為として調べてみると、有益な助言者が含まれるので、田邊教授の行為はこれにあてはまったのでしょう。
大窪の言動や他の人たちの表情を見ても、共著とすることは暗黙の了解だったのかもしれませんが、万太郎には分かりませんでした。
察して忖度する文化は日本の象徴かもしれませんが、知識がある程度なければ察することは難しいですよね。
みんなに公表する前に誰かが、チェックしてあげていれば避けられたかもしれません。
コミュニケーション不足が招いた悲劇ですが、現代社会でも価値観や生きてきた背景の違う人達の集まりの中では、言語化することの大切さを見直すべきでしょう。
心から皆に感謝しながら書き上げた論文でしたが、皆が落胆する結果となってしまいました。
「何を期待していたんだか。もういい。槙野万太郎、今後東京大学植物教室への出入りを禁ずる。」田邊教授(要潤)
田邊教授にとっての落胆は大きく、「ムジナモ」が万太郎との決別を決定的なものにしてしまいました。
「らんまん」山本浩司さん演じる美作(みまさか)との確執!
12月下旬に伊藤博文が内閣総理大臣に就任し、橋本さとしさん演じる森有礼(もり ありのり)が文部大臣になると、お茶の水女学校の校長美作(みまさか)が罷免されました。
代わりにお茶の水女学校の校長になったのが、田邊教授です。
順風満帆に出世しているように見える田邉教授ですが、植物学に関しては結果が出ていないことに対して敵対する動物学の教授である美作から皮肉をいわれる場面が多々ありました。
「政治にご熱心のあまり本業がおろそかにならないといいですな。ただでさえ、植物学教室は大した業績をだせていないようです。」美作(山本浩司)
「ご心配なく、今おもしろい発表を準備させていますので。」田邊教授
田邊教授は植物学での自分の名をあげるために、万太郎の「ムジナモ」の論文に大きな期待をしていたことがわかります。
それだけに、共著者として自分の名前がのっていないことを知った時は、落胆と怒りにかられたことでしょう。
「らんまん」田邊教授の葛藤と最後は溺死?
論文の共著者に自分の名前がのっていないことを確認したとき、田邊教授(要潤)が回想していたことは、万太郎(神木隆之介)への皆の賛辞の言葉でした。
「 ひとまず槙野さんに」
「槙野さんのほうが、私より優れています」
「牧野さんと遊びに来てくださらないかしら」
「牧野に礼を言うことです」
田邊教授は植物に対する情熱が皆を惹きつけ変えていき、結果をどんどん出していく万太郎の才能に嫉妬しながらも、皆の助言に心を改め受け入れようとしていました。
しかし、完成した「ムジナモ」の論文により、槙野を東大の出入りを禁止する決断になってしまい、田邊教授の心の葛藤が見えますね。
森有礼(もり ありのり)が文部大臣になって以来、順調に名声を手に入れていく田邊教授でしたが、森有礼の暗殺から風向きが変わっていきます。
お茶の水女学校の校長も罷免になり、東京大学までも出ていくこととなりました。
上が変わっただけで、慕うものの運命もこんなにも変わってしまうのですね。
そして、そんな矢先に田邊教授が遊泳中に溺死と衝撃的な記事が新聞に掲載れます。
背景から考えると溺死の原因は事故ではないんじゃないかと考えた人も多かったのではないでしょうか。
しかし、妻の聡子は友の寿恵子に
「旦那様は家族(私と子供とお腹の子)と生きようとしていた」
ということを伝え、田邊教授から渡すように預かっていた植物の蔵書を万太郎(神木隆之介)に手渡します。
田邊教授の溺死は不運の事故だったんですね。
他のだれでもない万太郎に蔵書を手渡し、この先の植物学を託したのは、やはり田邊教授は万太郎を認めていたのでしょう。
万太郎に東大の出入りを禁じ苦悩を味合わせましたが、田邊教授はどこか憎めないキャラクターでした。
それは、万太郎という才能の前に力が及ばない田邊教授の心の葛藤が分かる人も多かったからではないでしょうか。
「最終回」田邊教授の名前が図鑑に!
最終話で遂に万太郎(神木隆之介)と寿恵子(浜辺美波)の夢だった後世まで残る日本植物図鑑が完成しました。
図鑑には共著者の名前として、親友の波多野(前原滉)や藤丸(前原瑞樹)、助手の虎鉄(濱田龍臣)、妻の寿恵子とこれまでお世話になった人の名前が連なります。
その名前の中に、田邊教授の名前もありました。
田邊教授と万太郎には色々ありましたが、「らんまん」らしい感動のラストとなりましたね。
(万太郎と寿恵子の夫婦の愛と感動の最終回について詳しく知りたい人はこちら)
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